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岡山地方裁判所 昭和44年(む)521号 決定 1969年9月06日

主文

原裁判を取消す。

理由

一、本件申立の理由の要旨

原裁判は、本件につきなお勾留の理由が存続しているとしてもその取調べの方法が違法であるから、勾留の必要性がなくなった場合に準じて勾留を取消す旨判示するが、本件について取調べに違法はない。この点につき原裁判は事実を誤認し判断を誤った違法があるからその取消を求める。

二、右申立理由について検討する前に本件の経過についてみてみるに次の事実が認められる。

被告人は、昭和四四年八月二七日、本件起訴事実及びその他の被疑事実について、岡山地方裁判所裁判官により勾留された。

同年九月三日、右勾留に対し、弁護人より肉体的精神的拷問を理由として勾留取消の申立がなされた。

同月五日、原裁判官は弁護人の申立は理由がないとしたが、職権により、本件勾留が違法な取調に利用されているとして勾留を取消し、右決定謄本は同日午後三時〇〇分に本件被告人に送達された。

検察官は、右勾留取消決定謄本が本件被告人に送達される前たる同日午後一時三五分勾留事実中傷害の点につき公訴を提起した。

三、よって右被告人についての訴訟記録並びに捜査記録に基づき検討するに、勾留状の執行を受けた右被疑者に対し、その取調にあたった警察官の取調方法には幾分被疑者の黙秘権の侵害に当るのではないかを疑わせるような不相当な部分も看取されるけれども、勾留被疑者に対する捜査官の取調方法に一部違法な点があったとしても、同被疑事件について公訴が提起された後においては捜査段階における取調に違法な点があるの故を以て被告人の勾留の取消の事由とはなし得ないものと解するので、(昭和四二年八月三一日最高裁第一小法廷決定最高刑集二一巻七号八九〇頁参照)勾留の理由の存続すること明らかな本件において勾留の取消をした原裁判は失当であるから取消す外はない。

よって刑事訴訟法四三二条、四二六条二項により主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 西尾政義 裁判官 大下倉保四朗 近藤正昭)

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